11月23日より2024年1月21日まで
今回の皆様の寄付は、すべて出演者の渡航費補助と公益財団法人群馬交響楽団へ寄付に充てられます。
群響永久名誉指揮者マルティン・トゥルノフスキーを偲んで
フェードー・ルディン&ユリア・トゥルノフスキー デュオ ヴァイオリン リサイタル
賛助出演:シュテファン・トゥルノフスキー
2024年2月15日(木)15:00開演(14:30開場)
【出演】
ユリア・トゥルノフスキー(ヴァイオリン&ヴィオラ)
フェードー・ルディン(ヴァイオリン/元ウィーン・フィルコンサートマスター、ウィーン国立音楽大学教授)
シュテファン・トゥルノフスキー(バスーン/ウィーン・フィル、ウィーン国立音楽大学教授)
E.イザイ/2つのヴァイオリンのためのソナタ イ短調
J.M.ルクレール /2つのヴァイオリンのためのソナタ 作品3-2
W.A.モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ 第1番ト長調 KV.423
W.オズボーン/バスーンのための狂詩曲
C.P.シュターミッツ/2つのヴァイオリンとバスーンのためのトリオ 第2番 ト長調 作品14
C.サン=サーンス/死の舞踏作品40 編曲:ブテリス/デュヴァルによるデュオ版
https://readyfor.jp/projects/turnovsky
この演奏会は、マエストロ・マルティン・トゥルノフスキーの家族と弊社の長い交流の中から自然と生まれてきたものです。コロナ禍で一時計画をしましたが、断念に至りました。当然、開催を計画するのかで様々な事情も生まれ、家族は、今までのマエストロの群響への活動に敬意を払い、行われるものです。しかしながら弊社として、演奏会を行い赤字になれば、家族に何もすることができません。そのために、今回のクラウドファンディングで皆様の寄付を通して、節にお願い申し上げます。
マルティン・トゥルノフスキーを偲ぶ。 空間あい代表 新井 浄
2022年7月、コロナ禍の中、ロンドンへ、帰路ウィーンに立ち寄った。かねてから気がかりだった、群馬交響楽団永久名誉指揮者マルティン・トゥルノフスキー氏の墓前で手を合わせた。
マエストロは、ユダヤ人の弁護士を父に、ドイツ人翻訳家を母に、1928年プラハで生まれ、恵まれた家庭で育った。ただ父がユダヤ人という理由で、青年キャンプで数カ月を過ごすことになった。冷戦の分断の中で、政治的に翻弄され二つの祖国、東と西、亡命したマルティンの祖国への想いがどんなに複雑だったかを、その苦渋は私には、計り知れない。
プラハから北へ60キロほど離れたテレジン収容所では、多くの音楽家が作品を残し、やがてアウシュビッツに移送され命をたたれた。ナチスのプロパガンダによる非人道的な策略の中で、音楽の探求に没頭して「音楽」が人々に、そして自分自身に喜び与えることを全身で感じていたのか、まさに奇跡だ。
マルティンは、チェコの名指揮者コシュラーと青年キャンプで知り合い、その後二人は、プラハアカデミーで学んだ、二人の師匠であるアンチェルや群響をプラハの春国際音楽祭に招聘した音楽祭委員長、作曲家のペトル・エベンは、収容所で過ごしている。その後チェコがナチス・ドイツの支配から解放され、共産党政権が樹立、ソ連の衛星国化に反発して、クーベリックは亡命し、また1968年にチェコ事件が起こり、アンチェルは、演奏旅行中のアメリカで亡命し、そしてマルティンは、シュターツカペレ-ドレスデンの音楽監督を辞して、家族を伴って、オーストリアに亡命した。1989年に母国チェコが民主化されて、亡命以前の契約を果たして、プラハ交響楽団の首席指揮者に就任している。
マエストロは、94年群響のプラハ春国際音楽祭出演が縁となり、1995年6月第329回定期演奏会に初登場して、満席の群馬音楽センターで、スメタナのわが祖国からそしてドヴォルジャークの新世界を指揮し、拍手喝さいを浴びた。終演後のカーテンコールのなか、4歳の少女が花束をさしだした。その少女が今回の演奏会で出演する孫のユリア・トゥルノフスキーだ。その後、ユリアは、2005年に、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲で群響と共演している。その姿を待ちに待っていた群馬県在住もう一人の祖父の濵名敏白氏が、本年10月9日に逝ってしまった。
マエストロは、2013年10月に群馬交響楽団定期でスメタナ「わが祖国」全曲を指揮する予定だったが、体調不良により来日できず、家族は、2019年11月、群馬に訪れ、群馬交響楽団へのマルティンの近況報告を兼ねて、完成したばかり高崎芸術劇場で、「父がこの劇場で群馬交響楽団を指揮できたら、どんなに喜んだろうか」と息子のシュテファンは語り、マルティンのわが祖国全曲の想いを聞くことになった。ヨーロッパでのコロナ禍で中、妻のズデンカが2021年2月27日、そしてマエストロが5月19日に天国へ召された。群響は、5月22日第568回定期演奏会において訃報を挟み込み、現常任指揮者飯森範親により、マーラーの5番が捧げられた。彼らにとって複雑な想いの中、祖国とは何だったのか。今回の演奏会でユリアは二人の祖父のために、高崎芸術劇場で渾身の想いを込めるだろう。コロナ禍を乗り越えて、夜明けを信じて、合掌。